今回は、米軍人のPTSDについてのお話です。
米軍人の全員が関係する訳でありませんが、このPTSDに悩んでいるご家族もいるかもと思い、私が見て経験した事を残しておくことにしました。
PTSDとは
PTSDの正式名称は、Post Traumatic Stress Disorder。日本語では心的外傷後ストレス障害といい、心の病とされています。
PTSDの発症原因になりやすい出来事
PTSDは、生死に関わるような危険な出来事を目撃したり、体験したりした事で発症する確率があるそうです。
体験&目撃した出来事の重症度によって、その発症率は増加すると言われています。
人それぞれ、生死に関わるような出来事に対して感じる強弱は違いますが、虐待やいじめ、テロや戦争、そして地震や津波などの自然災害でもPTSDの原因となる事があるそうです。
地震だけでも怖いと思うので、軽々しく言ってはいけないけれど、戦地に派遣されていた軍人でPTSDを発症している人達はとても辛いだろうなと思います。
米軍人のPTSD
米軍人は、職務の経歴などからPTSDを発症する人が、民間人よりも高いそうです。
旦那ミリオは重症ではありませんが、軽い症状は時々でます。普段は、近くで銃声を聞いても、落ち着いて判断・行動できますし、ときどき遭遇する事故現場でも取り乱すことなく対処するので、「どうやったら、そんなに落ち着いて行動できるの?」と何度か聞いた事があります。(答えはいつも「そのためのトレーニングしてるから」しか返ってきませんが。)
でも、時々、コップが割れた音だけでも体が硬直して、瞳孔が開いている時があります。(数秒~数分で元に戻ります。他人は気づかないかもしれんが、長年夫婦をやっていると、こんな変化にも気づいてしまいます。)その時は、本人曰く「思考が停止して、全てが止まって(または超スローモーション)見えている」そうです。
旦那ミリオは一時期、最前線ではありませんが中東に派遣されていた事があります。
PTSDの映画のシーンは、現実に近い描写だと思う
映画の中のPTSDの人の描写を表すシーンで、「背を壁側に向けて座りたがる」シーンを見たことがありますか?現実もあれに近いです。
旦那ミリオもミリオのお兄さん(義兄:以後 M兄さんと呼びます)も、レストランなど人の多く集まる場所では、「入口から遠い席で、後ろに誰も立てない壁側の席」に座りたがります。M兄さんに至っては、必ず入口が見える席じゃないとダメです。(入ってくる人達を必ず目で追ってチェックしています。)
M兄さんはイラクに派遣されていた時期があり、最前線での任務だったそうです(家のドアを1件、1件ノックして、チェックしていく任務や遺体処理などもしていたそうです)。そして、イラクから還ってきてから重度のPTSDを発症しました。
現在は、定期的な薬の服用とカウンセリングで発作をコントロール・抑えているため、初めてM兄さんに会う人は気づかないと思います。(普段は、いつもおやじギャグ連発でとても陽気な人で、PTDSで悩んでいるなんて想像できません。)
でも、一時期は、PTSDが原因でお酒と薬でかなり荒れていた時期もあります。
退役軍人にホームレスが多い理由
退役軍人でホームレスになってしまう人の殆どが、このPTSDが原因で、社会に適応できなくなってしまった事による理由が多いそうです。参照元:【Why Veterans Remain at Greater Risk of Homelessness】
発作の症状には個人差があると思いますが、私が初めてM兄さんの発作を見たときは、どう対応していいか分からず、ただその場に突っ立て居るしかできませんでした。
今まで普通に話していたのに、(何かがきっかけで)その場にいない戦友の話を始めたと思ったら、目つきが険しく、汗をかき始めて、お兄さんにしか見えていない何かを目で追い、何かを呟いているのです。(たぶんミリタリー用語)短気になり、急に身振り手振りの動作が大きくなったと思ったら、しゃがんで小声で話したり。。。
私はお兄さんの発作を見てから、「戦地から還ってきて何年も経つのに、M兄さんの中では、まだ戦っているのが見えている」んだなと衝撃を受けました。家族でも困惑するのに、原因の分からない他人が見たら、悲しい事に「こいつ頭おかしい」で終わってしまうと思うんですよね。
こんな感じでPTSDへの理解が得られないために、仕事など社会生活に支障をきたし、ホームレスになってしまう人がいるのは、本当に辛い現実です。
アメリカは本当にホームレスが多いです。私はホームレスの方に時々、5~20ドルの自分が出来る範囲で金銭をあげていた時があります。
しかし、ミリオから「もし何かヘルプをしたいのなら、金銭ではなく、ファーストフードとかでいいから食料をあげて。」と言われました。なぜなら、「現金だと薬を買ってしまう可能性が高いから。」だそうです。それ以来、食品をあげるようにしています。
貴重な体験談のコメントを頂きました。
追記です:軍をリタイアした旦那様と一緒に【リタイアミリタリーのためのフェア】に参加されたDさんから、実際に現場で目撃してきた体験談を頂きました。(掲載を許可してくださり、本当にありがとうございます!)
私もアメリカに来る前は、こんな現実があるなんて知らなかったので、とてもビックリしたと同時に本当に悲しくなりました。
私がこのブログを発信している理由の1つが、この事実を1人でも多くの人に知ってもらいたいと思っているからです。
家族と社会からのサポートが必要
家族からの理解やサポートが得られずに孤立してしまうPTSDの人も多い中、M兄さんはラッキーな方だと思います。なぜなら、家族が諦めなかったから。
お酒と薬に溺れていた時代に、今の奥さんと知り合い、奥さんの献身的なサポートで薬を断ち、カウンセリングを受けるようになり、仕事でも信頼される役職に就き、普通の生活が送れるようになるまでになりました。
誤解のないように書いておきますが、奥さんと知り合う前も、義父さんや義母さん、他家族みんなでサポートしていました。しかし、お兄さんが完全に薬を断ち切るまでには説得できなかったようです。
日本でも、芸能人が再度薬に手を出すというニュースを見たことがありますが、M兄さん曰く、「薬の誘惑はとても強力で魅力的で、現実逃避するには一番簡単だった」だそうです。(注意!薦めているわけではないので、誤解しないで下さいね。)
普通過ぎて気づかないかもしれませんが、何気ない普通の生活が送れるって、本当に感謝するべき事だと思います。
PTSDへの接し方
旦那ミリオの家族は、アメリカの全州に散らばって暮らしているので、年に数回会うか会わないかで、M兄さん家族も例外ではありません。
そして、久しぶりに会った時は、いつも奥さんから「もしM(⇦お兄さん)が、戦地の話を始めたら、肯定も否定もせずにただ聞いているだけにしてね。」と念を押されます。
調べてみたら、遮らず(さえぎらず)、ただ話を聞くことに専念する事は、正しい接し方のようです。【参照元:PTSD/周囲の接し方】
いつ話してくれたかは覚えていませんが、M兄さんの話で、とても印象に残っている事があります。それは、
「イラクで何人か戦友が亡くなった。朝、目が覚めると、まだ生きていると思うのと、今日は(命を落とすのが)自分かもしれないと考えると怖かった。」
「当時は、近づいてくる子供でさえも怖かった。」
「還ってきてから「Thank you for your service」と言われると、(亡くなった)戦友を思い出して、自分が戻ってきて申し訳ない気持ちだった。」
まだ他にもありますが、こんな話をしてくれました。
私は、旦那ミリオも軍人なので、長期ディプロイから無事に還ってきてくれたら、もちろん嬉しかったです。でも、お兄さんのように還ってきた事に罪悪感を感じている人もいると思うととても悲しくなりました。
M兄さんは、完治する事はないだろうし、常にカウンセリングと薬の服用で症状を抑えて生活していくことになります。奥さんも、「今は安定しているけど、いつ最悪の事態が起こるかもしれない不安が常にある。」と言っています。
下記ビデオは閲覧注意です。人によっては衝撃を受けるかもしれません。
これはインスタに投稿されていたビデオです。「自殺未遂の元軍人」を「リタイア米軍人(Army)の警察官」が説得、自殺を思いとどませる動画です。
私は兵役・米軍を美化するつもりはありません。たまたま好きになり、結婚した相手が米軍人だっただけです。
ただ、本当に米軍人の中には「心の病」に苦しんでいる人が大勢いるという事を知って欲しいと思い、この記事を書いています。※再度言います。流血などは出てきませんが、ビデオ⇩は閲覧注意です。英語ですが、ぜひ音声ありで視聴して下さい。
PTSD軍人もその家族もサポートを求めてもいい
PTSDを発症している軍人も、そのサポートをする家族も、とても辛い時期が多いですし、投げ出したくなる事もあるかと思います。そんな時は、自分たちだけで抱え込まずに、他にサポートを求めてもいいんだという事も覚えておいて下さい。
下記⇩の【Military Crisis Line】で、ストレス管理やその他のさまざまなトピックに関する情報、サポート、励ましや説明の無料コーチングを受ける事が出来ます。軍人およびその家族が利用可能です。
Military Crisis Line
危機に瀕している人を知っている場合は、ライン 988 に電話して、1 を押してください。
家族も、助けを求める事は恥ずかしい事ではありません。あなたも自分自身、そしてあなたの家族を守るためにも一杯いっぱいになる前にサポートを受けて下さいね。
まとめ
書き言葉では、このPTSDがどんなに大変かを上手く表現できません。実際にその場で目撃してみないとその壮絶さは分からないと思います。でも、1人でも多くの人に理解して欲しいなと思い、今回記事にしました。
そして、1人でも多くのPTSDに悩む軍人と家族の方々もサポートが受けられる事を願います。
最後まで読んで下さり、本当に有難うございました。
本日も素敵なミリ生活をお過ごしください。Funday-Miliday‼